■ 年の瀬
また今年も年末が来てしまった。
アトリエが散らかっている。
正月を迎えるにあたり、ちょっとだけ片付けることにした。
「四十を越えれば五年十年は束になって飛んでいく」、
と誰かが言っていたが、
まさしく、その通りであるなぁ・・・。
昔、父に凧の揚げ方を教えてもらったことがあった。
三男のSがまだ小学生であった頃、
私はSに凧の揚げ方を教えたことがあった。
それは、私が父から教えられた凧の揚げ方だった。
空に揚がった凧を眺めながら、
数年前に鬼籍に入ってしまった父のことを思い出していた。
洟を垂らしながら私が凧を揚げていたのも、
つい先日のことのように感じられたものだった。
過ぎてしまえば、人生はまことに短く感じられる。
あれは四年ほど前のことだったか、
鎌倉の某喫茶店で一人のご老人と席をご一緒することがあった。
最初は季節の話題を交わす程度であったのが、
いつの間にか、話は「フランス革命」に及んでいた。
ご老人はそのライフ・ワークとして「フランス革命」を研究されていたのだ。
「会議は踊る・されど進まず」、
で有名な「ウイーン会議」の裏話も面白可笑しく話してくださった。
鎌倉に住む知人に聞いた話では、
そのご老人は、あの写真家の「土門拳」を世に出させたという、
某有名出版社の名物編集長でいらっしゃったという。
すべての資産を整理され、今は小さなアパートに独りで暮らしていらっしゃるらしい。
アパートの小さな部屋には小さなテーブルとベッド、
そして、奥様の位牌しか置かれていない、という・・・。
見事な生き方であるな、と感銘を覚えたものだった。
この歳になってもまだ娑婆っ気が抜けないでいる私だが、
年の瀬の大掃除のように、
いつかは私も身辺を整理しなければならない日がやって来るはず。
人生の瀬の大掃除、といったところか・・・。
さてさて、なのであるね。