■ ももひき
中国の某ファッション誌の編集長の、
「ももひきを穿くのは格好が悪い」
「欧米では笑いものにされている」、
という発言が国中で物議をかもしているらしい。
今から四十年ほど前のことであったと記憶しているが、
日本においても、
「男のももひきほど格好の悪いものはない」、
という発言が某女優の口から飛び出したことがあった。
「加賀まりこ」じゃなかったかな!?
以来、都市部ではももひきがさっぱり売れなくなってしまった。
夏はすててこ、冬はももひき。
この二つは男の必須アイテムであったように記憶しているが、
女にもてようとして、
若い男たちは寒さを我慢してももひきを穿かなくなってしまったのだった。
かく言う私もその内の一人だったのであるが、
二十八歳の時の冬を境に、
ももひきをまた愛用するようになってしまった。
今から三十四年前、
私は福島県の会津磐梯山の裏側に住んでいた。
いわゆる「裏磐梯」と呼ばれる地域。
五色沼や桧原湖、小野川湖のすぐ近く。
冬ともなると、屋外の気温はマイナス十度を軽く超えてしまう。
ももひきを穿いていなければ、命にかかわってしまう。
昔、「伊達の薄着で洟垂らす」という言葉があったが、
伊達者を気取るほど馬鹿馬鹿しいことはない。
それに、自分が意識するほど他人が自分を見ているなんてことはないしね・・・。
寒けりゃぁ堂々とももひきを穿けばいいのである。
女の目線など気にしなければいいのだ。
女はパンティ・ストッキングなどという便利なものを穿いているではないか。
パンティ・ストッキングなど脱皮を終えたニシキヘビの抜け殻のようなもの。
そんなものを穿いている女に、
「ももひきは格好が悪い」、などと言われたくはないものである。