■ AUTOMATA・その2
岡山の現代玩具博物館が所蔵するオートマタ、
「ピエロ・エクリィヴァン」。
エクリィヴァンは「ECRIVAIN」と綴る。
エクリィヴァンは「代筆」とか
「作家」を意味するフランス語。
従って、ピエロ・エクリィヴァンは、
「手紙を書くピエロ」とか、
「代筆するピエロ」というような意味になる。
一日の仕事を終えたピエロは、
ランプに火を灯して恋人に手紙を書き始める。
油が切れかかっているのか、
ランプの灯火は徐々に細く小さくなっていく。
手元が暗くなっていくのも気付かず、
ピエロはウトウトと居眠りをしてしまうが、
フッと我に返り、
ランプの灯火を大きくして、
また、恋人に向けて手紙を書き始める・・・。
このオートマタには、
そんな物語が設定されている。
もともと、ピエロ・エクリィヴァンは、
一八三九年、時計職人の息子としてパリに生まれた
「ギュスターブ・ヴィシー」が製作したものであった。
現代玩具博物館が収蔵するエクリィヴァンは、
一九二八年、造園師の息子として生まれたフランス人、
「ミッシェル・ベルトラン」が製作したレプリカ。
ベルトランはヴィシーの技術の後継者であり、
独創的なオートマタの製作に専念しつつ
古いオートマタの修復や復刻にも力を注いだ。
日本には十数体のエクリィヴァンが現存するが、
スイスの「サン・クロア」にある
オルゴールとオートマタの博物館「CIMA/シーマ」には、
世界にたった一体だけ、
ピエロの恋人のオートマタが収蔵されている。
彼女の名前は「COLOMBINE/コロンビーヌ」。
ペン先にインクをつけてやると、
コロンビーヌは紙の上に、「PIEROT」、と、書く・・・。