■ きっちゃてん
元町に出ると、
必ず立ち寄る喫茶店がある。
なかなかに美味しいコーヒーを飲ませてくれる。
煉瓦を敷き詰めた床。
表地を何度も張り替えたと思われる椅子。
脚をL字金具で補強した椅子。
漆喰の壁。
薄暗い照明・・・・。
ここには昭和三十〜四十年代の雰囲気が漂っている。
「喫茶店」でもないし「カフェ」でもない。
「きっちゃてん」と呼ぶのが、
一番似合っているような感じがする。
いつ訪れても、店内にはオールディズが流れている。
ウエイトレスのお嬢さんに訊いたところでは、
オールディズは店主の趣味であるらしい。
音楽とともに齢を重ねてきた店であるらしい。
「ボビー・ソロ」が「君に涙と微笑みを」を歌っている。
「ミーナ」の「砂に消えた涙」や、
「ウイルマ・ゴイク」の「花のささやき」が流れてくる。
ついつい歌詞を口遊んでしまう自分がいる。
ここの「バター・トースト」はとても美味しい。
狐色に焼かれたパンも美味しいが、
たっぷりと塗られたバターも美味しい。
バターの上に少量の粉砂糖を振りかけて食べる。
とても甘くて懐かしい。
子どもの時代には、
よくこうしてパンを食べたものだった・・・。
甘いバター・トーストを食べた後、
熱く苦いコーヒーで口を漱ぐ。
とっても美味しい。
明日は元町の書店に納品がある。
明日もここに来ることにしよう。
また、バター・トーストを食べよう。
懐かしい神戸の街の雰囲気が漂うきっちゃてん。