■ Hさん
カラクリ人形の制作を生業とする前、
私にとって、それはただの趣味でしかなかった。
自宅の部屋を飾るインテリアとして、
暇を見付けてはコツコツと作っていたが、
今から二十年ほど前、
池袋の「LOFT」で個展を開くチャンスを得た。
大きなチャンスではあったが、
作品が売れれば自宅のインテリアが無くなってしまう。
売れていくのを嫌った私は、
作品に法外とも思えるような値段をつけた。
「誰も買わないだろう」と思っていたが、
出展した四十点の作品はすべて売れてしまった・・・。
「俺には才能があるんとちゃうやろか!」。
今から思えば、
その勘違いがすべての出発点であったように思う。
きっかけが勘違いであろうとなかろうと、
一歩踏み出してしまえば、
あとは前に進むしかない・・・・。
犬も歩けば棒にあたる。
棒にあたれば痛みもあるが、
歩かなければ棒にもあたらない。
アトリエにHさんご夫婦がいらっしゃる。
Hさんは広島の印刷会社に勤めるサラリーマン。
趣味でカラクリ人形を作っていらっしゃるが、
その腕前はなかなかのもの。
作品のレベルは趣味の域をとっくに超えてしまっている。
このまま会社勤めを続けようか、
それとも、
カラクリ人形作家として生きていこうかと、
思い悩んでいらっしゃるご様子・・・。
一度しか無い人生。
思うように生きられればいいのだと思う。
生きていくためには常に経済の問題が付きまとう。
付きまとうからといって、
経済のためにだけ生きていくのは馬鹿馬鹿しい。
授かった才能は活かさなければ意味がない。
そう思う。
Hさん、頑張れば何とかなりますよ。
そして、何とかしなければなりませんね。
奄美大島の黒糖焼酎「長雲」を有り難うございました。
美味しく頂戴いたしました。