■ Hさん

aquio2005-04-30


ラクリ人形の制作を生業とする前、
私にとって、それはただの趣味でしかなかった。
自宅の部屋を飾るインテリアとして、
暇を見付けてはコツコツと作っていたが、
今から二十年ほど前、
池袋の「LOFT」で個展を開くチャンスを得た。
大きなチャンスではあったが、
作品が売れれば自宅のインテリアが無くなってしまう。
売れていくのを嫌った私は、
作品に法外とも思えるような値段をつけた。
「誰も買わないだろう」と思っていたが、
出展した四十点の作品はすべて売れてしまった・・・。
「俺には才能があるんとちゃうやろか!」。
今から思えば、
その勘違いがすべての出発点であったように思う。
きっかけが勘違いであろうとなかろうと、
一歩踏み出してしまえば、
あとは前に進むしかない・・・・。
犬も歩けば棒にあたる。
棒にあたれば痛みもあるが、
歩かなければ棒にもあたらない。
アトリエにHさんご夫婦がいらっしゃる。
Hさんは広島の印刷会社に勤めるサラリーマン。
趣味でカラクリ人形を作っていらっしゃるが、
その腕前はなかなかのもの。
作品のレベルは趣味の域をとっくに超えてしまっている。
このまま会社勤めを続けようか、
それとも、
ラクリ人形作家として生きていこうかと、
思い悩んでいらっしゃるご様子・・・。
一度しか無い人生。
思うように生きられればいいのだと思う。
生きていくためには常に経済の問題が付きまとう。
付きまとうからといって、
経済のためにだけ生きていくのは馬鹿馬鹿しい。
授かった才能は活かさなければ意味がない。
そう思う。
Hさん、頑張れば何とかなりますよ。
そして、何とかしなければなりませんね。
奄美大島黒糖焼酎「長雲」を有り難うございました。
美味しく頂戴いたしました。