■ 白い家
「白い家」のコーヒーが飲みたくなり、
後片付けもそこそこに、
車を走らせて帝塚山に向かった。
白い家の片隅には焙煎器が置いてある。
この店のコーヒーはとても芳ばしい。
コーヒー豆の量り売りもしてくれる。
その昔、マスターのNさんにもらった
オリジナルの「コーヒー缶」を持って出かける。
姫松の交差点の近く、
あるマンションの一階にある喫茶店だが、
昔は帝塚山三丁目の電停のすぐ前にあった。
発車の合図のベルを鳴らしながら走り出す路面電車。
その「チンチン」という音を今でも懐かしく思い出す。
私が初めて白い家を訪れたのは今から三十八年ほど前のこと。
カウンターだけの小さな店だった。
若い夫婦が二人で切り盛りする小さな店。
ハムとレタスとゆで卵を挟んだロール・パンは美味しかったし、
カリカリに揚がったドーナッツも美味しかった。
若い夫婦が醸し出す、
その雰囲気がなんとも気持ち良かった。
いくら通いつめても、
客とは無駄な会話を一切交わさない、
その姿勢も気持ちよかった。
設立されたばかりの
大阪芸大の学生たちの溜り場でもあった。
フォーク・シンガーの卵たちもよく出入りしていた。
若い頃の谷村新司も常連であった・・・。
白い家からは多くのアーティスト達が巣立っていった。
Nさんご夫婦との交流も三十八年になる・・・。
神戸から阪神高速を走って帝塚山まで約一時間。
白い家は定休日だった。
残念・・・・。
白い家には青春時代の思い出がいっぱいつまっている。
またいつか来ることにしよう。