■ アンティーク・オルゴール・コンサート

aquio2005-09-04

今から十七年ほど前まで、
私は長野県の白馬村に住んでいた。
雪深い村における生活には四輪駆動車が欠かせない。
その頃の私の愛車は三菱の「パジェロ」であった。
七年ほど使いこんだパジェロはボロボロの状態であった。
新しいパジェロを買うため、
私はいくばくかのお金を銀行に預金していた・・・。
今から十七年ほど前の夏、
東京の恵比寿の辺り、
あるアンティーク・ショップの店先で、
大きな木箱の梱包が解かれている場面に出会くわしたことがあった。
木箱の中にはオークでできた立派な箱が厳重に梱包されていた。
じっとその作業を眺めていたら、
「アンティーク・オルゴールですよ」と、
店主らしき女性が教えてくれた。
「お聴きになりますか?」という言葉に甘えて、
梱包が解かれたばかりのオルゴールを聴かせていただいた。
そのアンティーク・オルゴールは
アメリカの「REGINA/レジーナ社」が製造した「styles 50」。
八十五年ほど前に製造されたものであった。
かけていただいた曲は「LAST ROSES OF THE SUMMER」。
つまり、「庭の千草」だった。
素晴らしい音色であった・・・・。
初めて聴くアンティーク・オルゴールの音色。
不覚にも涙がポロポロとこぼれ落ちてしまった。
「これのお値段はいかほどですか?」
提示された価格は、三菱のパジェロが買えるほど高価なものであった。
「これ、ください!」と、
私は後先のことも考えずに買うことを決めてしまった。
女房には「アホと違う!?」と罵倒された・・・。
ボロボロであったパジェロは、
なおボロボロになるまで乗り継がざるを得なかった。
私には三人の息子がいる。
彼らが結婚する時には
ワーグナー」の「結婚行進曲」をかけてやろうと思う。
アンティーク・オルゴールの音色でおくりだしてやろうと思う。
今も、ある博物館でアンティーク・オルゴールの解説をすることがある。
今日は午後二時からのコンサートと解説を受け持った。
REGINA styles 50」。
このオルゴールを買った頃から、私の人生は大きく変化していった・・・・。
アンティーク・オルゴールの解説をする時、
様々な思い出が脳裏を横切ることがある・・・・。