■ お昼ご飯
岡山から帰る。
神戸に帰ってきたのは午後三時半を少し過ぎていた。
昼食をとっていなかったことに気付き、
息子の店に出かける。
「なんか食べるもんない?」
「火をぜんぶ落としてしまったから何もできんよ」
「火を使わなくても食べられるものって何かないの?」
「う〜ん、パンぐらいかなぁ・・・」
「じゃぁ、パンでいいや。コーヒーもつけてね」
「ほ〜い」
テーブルの上に置かれたのは、
白い皿の上に乗った二切れのパンだった・・・。
「パンっていうたらほんまにパンだけやねんなぁ」
「だって、他に何にもないもんね」
「せめてジャムくらいつけてくれへんか!?」
「料理にジャムは使わんもんね」
「それじゃぁ、せめてハムとかベーコンとかアンチョビとかサラミとかさ・・・」
「う〜ん、面倒くさいなぁ」
「お昼の時間が終わったばかりでお疲れのこととは存じますが、そこをなんとか・・・」
「アッ、そういえば友達にもらったジャムがあったわ」
「オッ、ありがたいねぇ」
「ほいよ」
「シャルドネー?何これ?」
「ワインのジャムらしいよ・・・」
「美味しいの?」
「知らんもんね」
確かにジャムはワインの味がした・・・。
「父が疲れて帰ってきたというのに、仕打ちが冷たすぎへんか・・・?」
「はいはい、夜の仕込みをせんといかんから早く食べて早く出ていってね」
「へいへい・・・」
「アッ、コーヒーは二百円でいいよ!」
「エッ、お金とるの?」
「パンはサービスしとくからね」
人には優しく接するようにと教育してきたが、
どこでどう間違ったのだろう・・・・。
親にはもっと優しく接するようにと教えておけばよかった・・・。