■ 年々歳々
草むらでは、
腹を膨らませたカマキリがヨタヨタと這っていた。
カマキリは冬眠をしない。
出産を終えたら静かに死んでいくのだろう。
それまで鳥の餌食にならなければいいのだが・・・。
職場の廊下には、
廊下と同じ色に体色を変化させたアマガエルがいた。
もうすこしで踏んづけてしまうところであった。
気温が下がるとともに、
蛇やカエルといった変温動物は動きが鈍くなっていく。
太陽に照らされたアスファルトは温かいのだろう、
道路に蛇が長々と寝そべっているシーンをよく見かける。
体温を上昇させないことには活発に動けないのだ。
その動きの鈍った蛇を空から猛禽類が襲って餌食にしてしまう・・・・。
カエルは虫を食べ、蛇はカエルを食べる。
そして、蛇は猛禽類に食べられていってしまう。
生き物の「死」は他の生き物の「生」に繋がっていく。
人の「死」は何の「生」に繋がっていくのだろうか・・・。
昨日の夜から岡山の自宅に帰ってきている。
庭の辛夷(こぶし)の木に実が生っていた。
もうすぐ袋が破れる頃。
しばらくすれば、
中から真っ赤な実が顔をのぞかせるはず。
実の中には真っ黒な種が入っているはず。
辛夷は冬を迎える準備を着々と進行させている。
袋は小さな握りこぶしをいくつも重ねたような形状をしている。
辛夷の名前はここからきているらしい。
辛夷は田植えの頃に咲き出す花。
今年の春は見事なまでに花を咲かせてくれたが、来春はどうだろう・・・。
年々歳々花相似たり・年々歳々人同じからず。
人は取り返しのつかない過去と予測のつかない未来との間で生きている。
来春、私はどうなっているのだろうか・・・。