■ 角兵食堂
時計は八時半を過ぎた。
今日もよく遊んだ。
私もSも頭から小麦粉を被ったような顔をしている。
眉毛に細かな木屑が降り積もっている。
鼻の頭にも白い木屑が付着している。
今日は一日中材木と格闘していたのだ。
「おい、腹がへったなぁ」
「はい、もうペコペコです」
「ご飯食べに行こうか」
「何食べます?」
「トンカツなんてどう?」
「いいですねぇ」
「かつ福に行こうか!?」
「アッ、あそこのトンカツは美味しいんですよね」
「かつ福」の駐車場に車を乗り入れてから気が付いた。
二人とも相当ひどい格好をしている・・・。
オーバーオールは細かな木屑で汚れたままだし、
指先には様々な色の絵の具が付着したまま。
「この格好のままじゃぁ店に入れてもらえんよなぁ・・・」
「コンビニでお弁当でも買いましょうか?」
「う〜ん、それもなんだか侘しいしなぁ・・・」
「アッ、それじゃぁ『角兵』に行きましょう!」
「オッ、それはいいねぇ」
「その前に、少しでも埃を落としません?」
「あぁ、そうしよう」
二人してお互いの服に付着した埃を落としあう。
「角兵食堂」は満席であった。
トラックの運転手らしき人に相席をお願いして座る。
烏賊のリング揚げに鯖の煮付け、熱々の豚汁とポテト・サラダ。
キッチンの中では中年の女性が卵焼きを作っていた。
卵焼きはホクホクと湯気をたてていた。
卵焼きとご飯の「中」も頼んで、代金は〆て九百三円。
美味しかった。
安かった。