■ オーバーオール
十五年ほど前から愛用している「LEE」のオーバーオール。
同じものを三着持っている。
「たまには洗濯したら!?」と言われることがある。
いつも同じオーバーオールを着ていると思われているらしい。
いつも洗濯はしているのである。
三着のオーバーオールを取っ換え引っ換えしているのだが、
絵の具は付着しているわ、
生地が擦り切れて薄くなってきているわで、
どうも薄汚く見えてしまうらしい・・・。
今日、知人の娘から
「それ、いらなくなったら私にくださいな」と言われる。
「こんなに汚れたオーバーオールがなんで欲しいの」と訊くと、
「その汚れきったところがいい」のだそうである。
新品のモノをわざわざ汚したり、漂白したり、
わざわざ擦り切れさせたジーンズがとても格好いいのだそうである。
私のオーバーオールには、
その「わざとらしさ」がないから素敵なのだそうである。
ま、汚そうと思って汚したわけではないから、
その「わざとらしさ」が感じられないのは当然だが、
不思議なことが流行るものである・・・。
私達が若かった頃、
汚れたジーンズは「貧乏」の代名詞でしかなかった。
できれば、フランネルのスラックスに
ウイング・チップの靴でも履いて粧しこみたいところだが、
仕事柄そうもいかない・・・。
オーバーオールに安全靴。
これが我々職人のフォーマル・ウエアなのである。
汚れてくだびれているとはいえ、とても愛着があるのも事実。
身体によく馴染んでいるのだが、
「新しいモノを買った時にはあげるよ」と約束する。