■ 徹夜/その2
また徹夜をしてしまった。
急ぎの仕事を抱えているワケでもないのだが、
制作に集中すると時間の経過が分からなくなってしまう。
気が付けば、時計の針は午前五時を指していた・・・。
アパートに帰って仮眠をとろうかと迷ったが、
「クーパー」をしばらく動かしていなかったことを思い出し、
真っ暗な道を駐車場まで歩く。
「クーパー」の車内は冷蔵庫のように冷えきっていた。
レザー・シートの冷たさがスラックスを通して伝わってくる。
カチカチと歯が音をたてるほど身体が震える。
クーパーのご機嫌も斜めであった。
チョークを引っ張りアクセルを何度か踏んでいるうち、
咳き込むような音をたててエンジンが息を吹き返す。
「ごめんね、長い間ほったらかしにしておいて」、とクーパーに謝る。
エンジンにしばらく暖機運転をさせている間、
車外に出てストレッチ運動を始める。
運転手にも暖機運転が必要なのだ。
シフトをロー・ギアに入れ、クラッチを繋いだ瞬間、
「クーパー」は蹴飛ばされたような勢いで発進する。
六甲山の頂上に向けて「クーパー」を走らせる。
「オースチン・ミニ・クーパー・S・マークⅡ」のエンジンはとてもピーキー。
高回転域でこそ、その性能が遺憾無く発揮される。
常に高回転を維持しないことにはエンジンのご機嫌が悪いのだ。
常にハイ・スピードで走ることを要求される・・・。
坂道の途中、
神戸の街が見下ろせるポイントで停車し、煙草に火を点ける。
百万ドルの夜景と評される神戸の街だが、
さすがにこの時間では明かりの数も少ない。
いろんなストレスを抱え込む時もあるが、
私は根っから車の運転が好きなんだろうと思う。
車を走らせていれば、いろんなコトを忘れられる・・・・。