■ 誕生日
昨夜、遅くにアパートのチャイムが鳴った。
扉の外にはレストランを経営する息子が立っていた。
手に大きな白い箱を持っていた。
箱の中には大きな「バースデー・ケーキ」が入っていた。
キャラメル・クリームをたっぷりと使ったケーキ。
「ちょっと早いけどお誕生日おめでとう」
「明日は出かけるから今日持ってきた」と言ってくれる。
店を閉めた後、
わざわざ私のために作ってくれたらしい。
嬉しい。
とても嬉しい。
今日で私は五十九歳になる。
来年は「還暦」を迎える。
いろいろなことがあった。
いろいろなことをしてきた。
振り返ると、
とても長い五十九年であったと思えるし、
とても短い五十九年であったとも思える・・・。
過去には「死」を覚悟する出来事も二度ほど体験したが、
よく今日まで生き延びてこれたものだと思う。
多くの人々に支えられてきた人生であったと思う。
残された時間はそう多くはないだろう・・・。
多くはないが、
やり終えねばならないコトが山ほどある。
やりたいコトも山ほどある。
同年輩の男たちが次々とリタイアしていく中にあって、
私はリタイアを許してはもらえない状況にある。
生涯を現役で終えることになるのだろうか・・・・。
私の生活に「老後」は無いように思えるが、
それはそれでとても幸せなコトなんだろう・・・。
いっぱい遊んだし、いっぱい仕事もした。
いっぱい子どもを愛したし、いっぱい女も愛した。
たくさんの人々とも関わった・・・。
「あぁ面白かった」
「あぁ楽しかった」と、
そう感じながら生涯を終えたいものである・・・。