■ 雪

aquio2005-12-17

雪が降ると必ず思い出すことがある。
今から二十六年前、
信州は記録的な大雪に見舞われたことがあった。
年末から降り出した雪は
十三日間降り止むことがなかった。
十三日間の降雪量は三メートル五十センチを越えた。
外気温は常にマイナス十度を下回っていた。
ある夜はマイナス二十度を越えた。
電気の架線は切れ、水も絶たれた・・・。
暗闇の中で幾夜か過ごしたことを思い出す。
信濃大町から北安曇郡小谷村までの間、
約四十キロの間に、
約一千台の車が三十時間にわたって閉じ込められるという事件もあった。
車に閉じ込められた人々に
近隣の住人たちが炊き出しを行ったという話を聞いた。
握り飯一個を二百円で売り歩いた人々がいた、という話も聞いた・・・。
心根の美しい人々も多いが、
性根の腐った人間も、また多い・・・。
危機に直面した時、
他人の難儀に遭遇した時、人はその本性を現すものなのだろう。
あの冬は雪との格闘の毎日だった。
今朝、アパートの窓の外がいつもより明るいことに気付く。
雪が積もっていた。
いつもより二十分ほど早くアパートを出発する。
ゴミ収集車が上り坂で立ち往生していた。
下り坂では数台の車が側溝に車輪を落して立ち往生していた。
職場には十分ほど遅れて到着する。
近くで救急車のサイレンの音が聞える。
人身事故があったらしい。
信号で止まりきれなかった車が人をはねたらしい・・・。
今夜は岡山の職場に向かわなければならない。
万全の用意をしていこう。
今も窓の外では何台かの車がスリップして立ち往生している。