■ 大三の男
映画「第三の男」を観る。
「第三の男」を観るのはこれで何度目になるだろう。
何度観ても、常に新しい発見がある映画。
窓が開いて部屋の灯りが通りに漏れるシーン。
その時の、
悪戯を見つけられた子どもが見せるような
「オーソン・ウェルズ」の表情はいつ観てもいいし、
イギリス占領軍の少佐役を演じていた
「トレバー・ハワード」の演技もなかなか渋い・・・。
その昔、今から四十年ほど前、
私は「大阪市立美術館」の地下にある
「大阪市立美術研究所」に通っていたことがあった。
絵画の基礎となるデッサンを学ぶ場所であったが、
美術大学の受験に失敗した浪人たちの溜り場のような場所でもあった。
その頃、研究所から歩いて十分ほどのところ、
阿倍野の盛り場に「大三」という名のパチンコ屋があった。
研究生であったTは絵画の勉強もせず、
毎日のようにこの「大三」に入り浸っていたことを思い出す。
で、彼についたあだ名が「大三の男」。
研究所には「五郎さん」という名の生徒もいた。
彼は私よりも五歳ほど年長であった。
「五郎さん」は研究生の中の兄貴分的な存在であった。
彼からデッサンの手ほどきをよく受けたものだった。
「五郎さん」というのは彼の本名だとばかり思っていたが、
実は、五度も美大受験に失敗した人であった・・・。
五年も浪人しているから「五郎さん」と呼ばれていたのだった。
その前の年には「四郎さん」と呼ばれていたらしい。
映画を観ながらその頃のことを思い出していた。
「大阪市立美術研究所」は猛者が集まる場所であった・・・。
とても懐かしい。
彼らは今どこでどうしているのだろうか・・・・。