■ Blechspielzeug Patente

aquio2006-02-11

「Blechspielzeug Patente」
つまり、「ブリキのおもちゃ特許登録集」。
十年ほど前、
ニュールンベルクの古書店で入手した書籍。
「錫びき鉄板」、いわゆる「ブリキ」の語源は
ドイツ語の「blech/ブレヒ」であるといわれている。
「ブレヒ」は「薄い金属板」を意味する言葉。
「Blechspielzeug Patente」は
一八七八年から一九一五年までの特許を網羅した上巻、
そして、一九一六年から一九三九年までの特許を
網羅した下巻の二冊からなる。
上巻は一九七七年に、下巻は一九七九年に発行されている。
「馬を走らせる男」や「手紙を書く婦人」、
「狩をする狩人」や「綱渡りをするピエロ」・・・。
様々な仕掛けをもった楽しいおもちゃの図面が年代順に紹介されているが、
第一次世界大戦が始まる一九一四年頃になると、
「ラッパを吹く兵隊」や「鉄砲を撃つ兵隊」といった、
いわゆる戦争おもちゃの登録が増えていく・・・。
そして、第一次世界大戦が終了する一九一八年頃には、
「ビリヤードを楽しむ男」や「両脚を動かして動く水鳥」、
「メリーゴーランド」や「餌をついばむ鳥」といった、
実に平和的なおもちゃが数多く考案されるようになる。
ブリキのおもちゃの生産が復活していくのだが、
第二次世界大戦が始まる一九三九年頃には、
また、「戦車」や「戦闘機」といった戦争おもちゃが多くなっていく。
あの「グリコ」のおまけでさえもそうであったように、
おもちゃには時代の背景が色濃く反映されていくものなのだ。
「Blechspielzeug Patente」の最後の頁には、
複雑な動きをする「レーシング・カー」の図面が掲載されていた。
この「レーシング・カー」の特許が登録されたのは一九三九年九月十三日。
イギリスとフランスがドイツに対して宣戦を布告し、
第二次世界大戦が始まったのは、その十日前の九月三日のことだった・・・。
おもちゃは「平和」な時代にしか開発されない。
からくり人形や動くおもちゃのデザインを手がける私にとって、
この「Blechspielzeug Patente」は一級の資料だが、
おもちゃの歴史を辿るという行為は、
人間の歴史を辿るということと同じ行為でもある・・・。