■ 八海山
当番の朝はいつもより早く起き、
教室の鍵を開け、
大きな石炭バケツを持って石炭置き場に向かう。
ストーブの中の新聞紙に火を点け、
新聞紙が勢いよく燃え上がったところに木っ端を入れる。
木っ端の火勢が強くなったころを見計らって石炭をくべる。
私が小学生であった頃、
学校には「ストーブ当番」という制度があった。
授業が始まるまでに教室を暖めておく、
それが「ストーブ当番」の仕事だった。
あの時代、
暖をとるものといえば練炭火鉢に豆炭炬燵、
そして「達磨」と呼ばれた石炭ストーブしかなかったように思う。
子どもの頃から寒さに慣れているのだろう、
とうとう今冬はストーブを使わずじまいだった。
今冬の灯油の使用量はゼロに終わった。
今は「フリース」という軽くて暖かい素材の防寒着がある。
足を炬燵に入れてフリースを着ていれば、
それだけでけっこう暖かく過ごせる。
子どもの頃は綿入りの重いドテラを着ていたものだった・・・。
さて、机の上の仕事もあらかた片付いた。
六甲山の桜は今が見頃。
近くの寺の枝垂れ桜を見にいこうか。
今日は朝からけっこう冷える。
風も冷たい。
「花冷え」とはこのこと。
今夜は水炊きを作ろう。
具は何がいいだろうか・・・。
足を炬燵に入れ、
鍋をつつきながらKさんに頂戴した「八海山」をチビチビとやることにしよう。