■ S君

aquio2006-06-04

S君が神戸の職場にひょっこりとやって来る。
S君と知り合ったのは今年の四月七日。
「Erzgebirgisches Spielzeug Museum」、
ザイフェンの玩具博物館における
私の個展会場においてであった。
当日の昼ごろ、
会場を物珍しげに見回している一人の青年がいた。
声をかけると、
マダガスカルからの帰りだという。
S君は「青年海外協力隊」の一員として
マダガスカルに赴任していたらしい。
海外協力隊への参加を終えた青年たちには、
世界中どこにでも好む所に旅行できるという特典が与えられるらしい。
もっとも、その旅行先は一ヶ所に限られるのだが、
S君はその候補地としてザイフェンを選らんだという。
S君は腹が減っている様子であった。
オープニング・パーティで食べ物とシャンペンを勧めたことを思い出す。
私に娘がいたとしたら、
ぜひ婿に迎えたい、とそう思わせるほどの好青年であった。
「ここで出会ったのも何かの縁」と、
私は彼に私の名刺を手渡していた。
その名刺を頼りに、神奈川から神戸まで会いにきてくれたのだ・・・。
実に嬉しいではないか。
昼間ではあったが、彼にビールをご馳走する。
訊けば、眼鏡のデザインと製造の職に就くことを希望しているという。
今から約三十八年ほど前、
私はある光学メーカーに勤務していたことがあった。
その会社では様々な種類の眼鏡を製造していた。
日本における眼鏡業界の現状と問題点をS君に伝え、
当時の上司が経営する東京・青山の眼鏡メーカーを紹介する。
紹介状がいるなら書いてやってもいいと思う。
デザインした第一号の眼鏡は私にプレゼントすると約束してくれる。
嬉しいコトを言ってくれるではないか。
「縁」とは不思議なものである・・・。