■ 板井原

aquio2006-06-05

「板井原」に出かける。
鳥取県・智頭の町から、
細く曲がりくねった山道を登ること約四キロ。
谷川にへばりつくような格好で
十数件の民家が点在している。
「板井原」は平家の落人伝説が残る村。
住民は養蚕や炭焼き、
桑や葛を利用した林野産業で生計をたててきたという。
雪が降りだすとともに住民は麓の集落に移動し、
雪が解けだすとともに
「板井原」に戻るという生活を繰り返してきたという。
ここには日本の伝統的な山間集落の姿が残っている。
智頭と「板井原」を結ぶトンネルができたことで、
近年、この「板井原」を訪れる観光客が増えてきているらしい。
しかし、トンネルができたことで人口の減少に拍車がかかったともいう。
「板井原」の人口はたったの十人・・・。
車を停め
築百年の古民家を改造した「カフェ・野土香」に向かう。
若い一人の女性がそのカフェを経営していた。
訊けば、彼女は鳥取の出身であるらしいが、
京都の美術大学で木工の勉強をしてきたという。
「何のお仕事ですか?」と訊くから、
「からくり人形の制作をしている」と答える。
すると、
「五年ほど前、私はあるケーキ教室に通っていた」
「その教室に岡山から通ってくる一人の若い女性がいた」
「彼女もからくり人形の仕事をしていたように記憶している」
「確か、彼女の名前はIさんであったと思う・・・」、と言うではないか。
からくり人形の制作に従事している女性はそうは多くない。
「岡山のIさん」というのは、
私のもとで働いていたIのことである・・・。
人と人の繋がりは不思議の一言に尽きる。
水がいいからだろう、
「野土香」はなかなか美味しいお茶を出してくれる。
今度はIを連れてきてやろう。