■ 匂いと臭い
三日に一度は洗濯をするようにしている。
昨夜は十時ころから小雨が降り出した。
洗濯物をベランダから慌てて取り入れる。
狭いアパートのこと、
洗濯物を干すスペースがどこにもない・・・。
仕方がないから、
鴨居に洗濯物を引っ掛けてぶら下げる。
生活者である以上、
家の中に生活の匂いが漂うのは仕方がない。
しかし、生活の臭いが漂うのは我慢がならない。
昔から「男寡に蛆が湧く」と言うではないか。
独り暮らしであるからこそ、
できる限り清潔に暮らしたいと、いつもそう思う。
私のアパートには職員たちがよく遊びに来る。
人に見せたくないものはできるだけ隠すようにしている。
自分が見たくないものもできるだけ隠すようにしているが、
梅雨時の洗濯物の干し場には困り果ててしまう。
ま、独り住まいであるから、
気にしなければそれで済むのだが、
視覚の隅に洗濯物がぶら下がって見えるのは、
あまり美しい風景とは言い難い・・・。
洗濯物は屋外に干してこそ似合う。
鴨居から洗濯物がぶら下がっている。
それが定着した日常の風景であるなら、
その風景は心の中で風化していってしまう・・・。
視覚の隅に見えるものであっても、
風化してしまった風景は見えていないも同じこと・・・。
生活の臭いと匂い。
生活の臭いに慣れてしまうと、
その臭いを漂わせていることに気付かなくなってしまう。
私の部屋はアパートの三階にある。
二階の203号室からは、
いつも「お香」の匂いが漂ってくる。
なかなかにセンスの良い香りではある。
いったいどのような人が住んでいるのだろうか?
どのような暮らし向きをされているのだろうか?
少し気になる・・・。