■ ドン・ペリニョン

aquio2006-07-26

Tさんがアトリエにやって来られる。
Tさんにお会いするのは今日で三回目になるだろうか。
今日は美しいお嬢さんを二人連れていらっしゃった。
お嬢さんたちから頂戴した名刺を見ると、
そこには、
ある大会社の「会長付」という肩書きが印刷されていた。
Tさんはその大会社の会長でいらっしゃったのだ。
少しも知らなかった・・・。
どこから見ても、
Tさんはどこにでもいる好々爺にしか見えない。
私はTさんをただの話好きの爺さんとみなして付き合ってきた。
私にも会社勤めの経験があるが、
会社勤めは肩書きがモノを言う世界である。
しかし、会社を辞めた後、
私は人と肩書きで付き合ってはこなかった。
肩書きを外した時、
その時にこそ、その人の人となりがよく見える。
今日、Tさんがアトリエにいらっしゃたのは、
馬のからくり人形を作って欲しいというご依頼であった。
どのような形状のからくり人形を作るか!?、
一頻りの相談の後、
「Nさん、あなた、シャンペンは好き?」、とTさんにいきなり訊かれる。
「はぁ、大好きですが・・・」と答えると、
「あぁそう、よかった、これあげる」、と大きな紙袋を差し出された。
「何ですか?」
「シャンペンだよ」
「ご注文を頂いた上にシャンペンまで頂けるんですか?」
「ま、遠慮しないで」、とおっしゃるので、
遠慮しないで頂戴してしまった。
パッケージを開けてみると、
ドン・ペリニョン・1998年・ヴィンテージ」であった・・・。