■ 女郎蜘蛛
婚姻色とでも言うのだろうか、
「女郎蜘蛛」は
糸を出す穴の辺りを真っ赤に変色させることがある。
その赤い色を女性の「蹴出し」、
いわゆる「裾除」の色に見立てたことから、
この蜘蛛は「女郎女郎」と呼ばれる。
この場合の「女郎」は「遊女」を差す言葉ではなく、
広く「女性」を差す言葉であるらしい。
今日、久しぶりに「女郎蜘蛛」を見つける。
その巣も、かなり大きい。
身体を隠し、細い針金で巣の端をつついてみると、
糸の振動をキャッチした蜘蛛は、
ススス・・と、糸が震える方向に移動を始める。
獲物が糸にかかったと勘違いするのだろう。
「女郎」が「遊女」を差す言葉ではないとはいえ、
「女郎蜘蛛」という言葉には、
なんとも言えない、ドロドロとした色気のようなものを感じてしまう。
そういえば、
伊豆の浄蓮の滝の主は、この「女郎蜘蛛」であるという伝説がある。
蜘蛛は人の足に糸を絡ませ、
滝の中に引きずり込んで食ってしまう、という。
民話では色白の艶やかな女として登場する・・・。
「女郎蜘蛛」の巣は常夜灯のすぐ近くに張ってあった。
虫たちが明かりに引き寄せられて集まってくる。
「女郎蜘蛛」は、そんな虫たちの体液を吸いとろうと、
息を潜めてジッと待っている・・・。
昔、「蜘蛛女」というタイトルの映画があった。
女の色香という糸に絡めとられ、
身を滅ぼしていく男の物語であったように記憶している。
うっかり糸にかかってしまうのではなく、
自らすすんで糸にかかる男のなんと多いことか・・・。
ま、確かに、男にはそういう部分がある。