■ 野垂れ死に

aquio2006-10-05

有馬温泉「御所坊」のラウンジにおいて、
糸操り人形師の「飯室康一」さんと談笑する。
お互いの仕事のことから、
話は、次第に死生観へと移っていった。
「これからは大道芸人として生きていきたい」
「あと数年もしたらヨーロッパに行くつもり」
「数年後にはヨーロッパの街角に立っているだろう」
「マリオネットの大道芸人で一生を終わる予定」
「帽子の中に見物料を入れてもらおう」
「稼いだ金で次の町に移動するのさ」
「そして、どこかの町で野垂れ死ぬのだろう」
「息子も立派に独り立ちしたことだし・・・」
これが、「飯室」さんが考えるこれからの生き方だった。
ちなみに、
「飯室」さんの息子さんは国際的に有名なパントマイマー。
あの「マルセル・マルソー」の弟子でもいらっしゃる。
過日、その息子さんと食事をする機会を得たが、
どこにでもいるような普通の青年であった。
「貴方はこれからどうするの?」、と訊かれるので、
「いつかはドイツに移住するつもり」
「小さな村に移住し、そこでおもちゃを作って過ごす」
「そして、ドイツのどこかで野垂れ死にするのだろう」、と答える。
誰に遠慮することもなく、私は好き勝手に生きてきた。
いろいろなことがあったが、
基本的には自分のしたいことだけ、やってきた。
男三昧の人生であったといえる。
終の住処はドイツではないかもしれないが、
どちらにしても、畳の上で死ぬことはないだろう。
「飯室」さんも畳の上では死ねない人なのである。