■ お受験

aquio2007-01-19

今から四十二年ほど前、
私はある美大の入学試験を受けたことがあった。
その頃の私の生活は赤貧洗うが如し、であった。
その美大では、
学科と鉛筆デッサンと色彩のテストがあった。
三日間に亘る試験だった・・・。
そして、最後には、
彩色を施した自筆の絵をイーゼルに掛け、
試験官の面接を受けなければならなかった。
「入学できたら、君はアルバイトをしますか?」
席に座るなり、その試験官は私にそう訊いた。
「私は貧乏ですから、学費を稼がなくてはなりません」
私はそう答えたことを今でも憶えている・・・。
「この学校ではアルバイトをしている時間はありませんよ!」
「貧乏人は絵を描くな、ということですか?」
そんなやり取りが続いた後、
腹を立てた私はイーゼルを蹴飛ばして席を立ってしまった・・・。
「大学はアルバイトをするためにあるのではない」
「学業を第一にしろ!」
「嘘でもいいから『アルバイトはしない』と言え!」
試験官はそう私に伝えたかったのだろう・・・。
しかし、その頃の私には心に余裕というものがなかった。
「いやはや、若かったなぁ」、と今でもその時のことを懐かしく思い出す。
今、私はある一人の美大受験生の相談に乗っている。
相談に乗らなければならない義理のようなものがあるのだ。
先日、その彼に「美大に合格したらアルバイトする?」、と訊いてみた。
答は、「学費と生活費は親の仕送りがありますから」
「アルバイトで稼いだ金は遊びに使います」、というものだった。
こいつはつまでママのおっぱいを吸うつもりなんだろうか・・・。