■ 一時の恥
鳥取から帰る。
鳥取には猛烈な風が吹いていた。
今朝のテレビのニュースによると、
瞬間最大風速は二十九メートルを超えたという。
時速に換算すると、
実に、百キロを越すスピードで大気が移動した、
という計算が成り立つ。
猛烈なエネルギーではある・・・。
柔構造で建てられた建物なのだろう、
泊まったホテルも前後にユラユラと揺れていた。
ホテルの部屋で軽い船酔いを経験する。
それにしても、今日はSさんに振り回された一日だった。
どうして知ったかぶりをするのだろうか・・・。
「私はそのことについて知識がありません」
「この機械を設計したO社と直接話をしてください」
最初からそう言ってくれてさえいれば、
今日の作業はそう困難なものではなかった・・・。
電気のエキスパートであるような口ぶりであったから、
全員が彼の言葉に惑わされてしまった・・・。
水は高い方から低い方に向かって流れる。
その水の流れを「水流」と呼び、そこには必ず「水圧」が発生する。
電気の場合も同じこと。
電気の流れを「電流」と呼び、「電圧」には「高さ」がある。
彼はそんな電気のイロハすら知らなかった・・・。
彼の言動で皆が振り回されてしまった。
無駄に一日を過ごしてしまった。
皆のスケジュールを調整し、
また、鳥取に出かけなければならない・・・。
その責任を彼はどう感じているのだろうか。
知らないことは知らないと言えばいい。
知らないことは知っている者に訊けばいいのだ。
「聞くは一時の恥・知らぬは末代の恥」なのだよ。