Lynne & David・その2
リンさんが、
「さ〜し〜こ〜の〜ど〜ん〜ざ〜」を見たいと言う。
リンさんの解説によると、
「さ〜し〜こ〜の〜ど〜ん〜ざ〜」とは、
昔、淡路島の漁師たちが用いた防寒着であるらしい。
リンさんは平仮名が書ける。
「さ〜し〜こ〜の〜ど〜ん〜ざ〜」とは
「さしこのどんざ」のことであった。
防寒着であるから、
「さしこ」とは「刺し子」のことであると見当がつくが、
「どんざ」の意味が分からない・・・。
広辞苑で調べてみると、
「古い布を重ねて刺し子にした着物」、とそこには記されていた。
「刺し子のどんざ」とは、
淡路島の漁師の女房たちが亭主のために縫った防寒着であった。
淡路島観光協会に連絡し、その存在を尋ねると、
「北淡町歴史民族資料館」に数着の「どんざ」が保存されているという。
リンさん、デーヴィッドを車に乗せ、淡路島に向かう。
「刺し子のどんざ」は、
三枚の藍染の木綿布を刺し子に仕上げたもの。
保存されていた「どんざ」からは、亭主と女房の会話が聴こえてきた。
「どんざ」を縫った女房たちのお喋りも聴こえてくる。
刺し子の技術を教えあったり、競いあったりしたのだろう・・・。
ミシンが普及していなかった時代、
漁師の女房たちは亭主のために一針ずつ丁寧に縫った、という。
その技術も素晴らしいが、
その女房たちの心意気が、なにより素晴らしい。
しかし、昭和二十五年頃を境に、
「刺し子のどんざ」は作られなくなっていってしまう。
「ゴム引きの合羽」にその座を追われていった、という。
「大鳴戸記念館」で人形浄瑠璃を観た後、我々は徳島に移動。
徳島の「十郎兵衛屋敷」で「恵比寿回し」を見学し、
土砂降りの雨の中、大阪に向かう。