■ Fさん
Fさんが死にかけている。
末期の肝臓癌・・・。
Fさんが倒れたのはつい先日。
私が新潟に出かける前々日のことだった。
「気分が悪い」と訴え、
病院に担ぎ込まれた時には、すでに手遅れだった。
肝臓の機能がほとんど停止していたらしい・・・。
手の施しようがなかった、という。
Fさんは大酒飲みだった。
いくら飲んでも酔うことがなかった。
十年ほど前、FさんはC型肝炎を患ったことがあったが、
どうやら、その頃から肝臓はおかしくなり始めていたらしい。
肝臓癌の原因は肝炎のウイルスであることが多い、と聞く。
主治医の診断によると、
肝機能が狂っていたから、酒がいくらでも飲めたのであるらしい。
「私を許してちょうだい」
「みんな私が悪いの」、と
Fさんのお母さんはFさんの枕元で号泣されたという。
昔、お母さんもC型肝炎を患われたことがあったらしい。
C型肝炎は感染症であり、遺伝とは関係はないのだが、
自分からの遺伝のせいで息子が死ぬ、とお母さんは考えられているという。
子どもに何かあった時、母親は必ず自分を責める。
C型肝炎は感染症であると理解していても、
母親としての感情がそれを認めようとはしない。
母親とはそういうものなのだ・・・。
今、お母さんは付き切りで看護をされていらっしゃるという。
お母さんにとって、息子と共有できる時間はほとんど残されていない。
お母さんは八十二歳になられる。
この日記を書いている間にも、Fさんは死んでしまうかもしれない。
辛いことである。
仲間が少しずついなくなっていく・・・。
とても辛い。