■ ネバーランド
「いつかまた戻ってくる」、とウエンディに約束し、
ピーターパンはネバーランドに帰っていってしまう。
次にピーターパンが戻ってきた時、
ウエンディはお母さんになっていた。
大人になったウエンディは、
もう空を飛べなくなってしまっていた・・・。
で、ピーターパンはウエンディの娘の
ジェーンとネバーランドに飛んでいってしまう。
ピーターパンのあまりにも有名なラスト・シーン。
子どもが子どもである時、
子どもはファンタジーの世界で遊ぶことができる。
このラスト・シーンはそのことを示唆している、と思う。
昔、「いつまでも大人になりたくない男たち」のことを
「ピーターパン・シンドローム」と呼び、
「大人にはなりたくないが大人にならざるをえない女たち」のことを
「ウエンディ・ジレンマ」と呼んだ・・・。
今日、S女子大で講義を行う。
この女子大は妻の母校でもある。
約百五十名の受講生のほとんどが保育士志望であるらしい。
で、遊びとおもちゃについての講義をすることにした。
二十歳そこそこの若いお嬢さんたちなのだが、
そのほとんどが、すでにファンタジーの世界を理解できなくなっていた。
わずか十年ほど前までは、
彼女たちもピーターパンの世界の住人であったはず・・・。
「お人形さんとお話をしたことがある人は?」、と問うと、
わずか二十名ほどの女の子たちの手がパラパラと上がっただけであった。
そもそもがファンタジーの世界で遊んだことがなかったのかもしれない・・・。
子ども時代はテレビ浸けの毎日であったのかもしれない・・・。
ファンタジーの世界で遊んだ経験のない女性たちが保育士になりたい、という。
子どもたちはファンタジーの世界の住人である。
さて、彼女たちはどうするのだろうか・・・。
さて、明日から台湾に出張。
帰国は三十日になる予定。