■ お絵描き

aquio2007-07-08

九人の子どもたちと絵を描く。
B子ちゃんは小学三年生の女の子。
九人のメンバーの中でも一番小柄な女の子。
どうやら、
B子ちゃんは絵を描くことに自信がない様子。
「うち、絵下手やから」、と下を向いて呟いている。
絵を描かせてみると、確かに線がぎこちない。
少し絵に自信のあるT男が、
「B子は絵描くの下手くそやなぁ」、とからかう。
しばらくすると、
仲間はずれになったB子ちゃんは鬼の絵を描きだした。
「何の絵?」、と訊くと、
「桃太郎のお話に出てくる鬼」、と答える。
その自由闊達な線といったら・・・。
「B子、お前めちゃめちゃ絵上手いやんか」
「そうかぁ、鬼かぁ、もっと描いてみてくれへんか」
「おっちゃん、もっとB子の絵観てみたいわ」、とおだてる。
いったい誰がこの子の絵が下手くそだと決め付けたのだろう。
下手だと決め付けられていたからこそ、
その脳と右手が萎縮してしまっていたのだろう・・・。
桃太郎にやっつけられて眼を回してしまった赤鬼、
風邪をひいて洟を垂らしている青鬼、
髪に白髪が混じった鬼の親分・・・。
子どもが子どもである時代にしか描けない絵が次々に生まれる。
実に素晴らしい。
絵をダンボールに貼り付け、お面を作って遊ぶ。
T男の描く絵が色褪せて見えてくる。
国語や算数のテストと違い、
絵にははっきりとした点数がつけにくいものである。
テストの点数のいい子だけが頭のいい子なのでは、決してない。
対象となるモノの輪郭が正確に捉えられている絵。
一枚の紙に、対象となるモノの輪郭がきちんと収められている絵。
どうやら、それらが「上手な絵」ということのようであるが、
絵画は感性の世界に属する作業である。
感性を持ち合わせない大人が、感性を持ち合わせた子どもの絵を評価する・・・。
親や教師は感性豊な子に育って欲しいと願いながら、
実は、その感性の芽を摘み取っているのではないだろうか。