■ 好き嫌い 

aquio2007-07-16

「好き嫌いのある人に旅をする資格はない」、
昨日の日記にそう書いたところ、
「お前に好き嫌いはなのか!?」、
という内容の一通のメールが届く。
答は、「あります」、ですね。
あれは私が十歳の頃だったと記憶しているが、
庶民にとり、牛肉がまだ縁の遠い食べ物であった頃、
父が会社帰りに一塊りの肉を買ってきたことがあった。
庭にかんてき(七輪)を持ち出して炭火を熾し、
家族ですき焼きを作って食べたことがあった。
あれは何の肉だったのだろう、
ラードの塊りを食べるような食感があった。
口の中が獣脂でまみれるような感じがした・・・。
とても不味かったことを、今も鮮明に憶えている。
「なんやこの肉食べたら口の中ベタベタして気持ち悪いなぁ」、
と私が何気なく呟いた時、
父は「すまん・・・」というような表情を浮かべ、
しばらくの間うつむいたままだった・・・。
ジビエ」といえば格好はいいが、
多分、あれは牛以外の獣肉であったのだろう・・・。
当時、我が家は赤貧洗うが如しの生活を送っていた。
家族のため、父は精一杯のことをしてくれたのだと思う。
しかし、知らないこととはいえ、
子どもの頃のことであったとはいえ、
私は父の心を踏みにじるような発言をしてしまった・・・。
すき焼きは好きだが、
すき焼きを食べる度に、私はあの時の父の顔を思い出してしまう。
すき焼きは好きだが、大嫌いなのである。