■ 髪と髭
白髪が増え、生え際がほんの少し後退したとはいえ、
髪の毛はまだまだたっぷりと残っている。
私は十八歳の時からロング・ヘアーで通してきた。
両耳はいつも髪の毛で隠れていた。
行き付けの美容院のオヤジは、
「Nさん、髪短くして耳出さない?耳!」
「耳出したほうが似合うと思うけどなぁ・・・」、
と訪れる度に呪文のように唱えていたが、
あまりの暑さに耐えかね、
先日、髪をとうとうバッサリと切ってしまった。
昨日は岡山市に出かけていた。
あるテレビ番組にその他大勢で参加していたのだが、
会場に着いたとたん、
「あ〜、Nさん髭剃ってるぅ」
「あ〜ぁ、髪も切ってる・・・」
「優勝が決まるまで髭剃らないって約束したじゃない」、
と子ども達が駆け寄ってきた。
六組の子どもたちのグループが、その技術とアイデアを競い合うという番組なのだが、
「君たちの優勝が決まるまで髭を剃らない」
「散髪に行かない」、と子どもたちに約束していたのだが、
そのことをすっかり忘れてしまっていた・・・。
「Nさんが髭剃っちゃったから、もう優勝しないかも・・・」と子どもたちが口々に言う。
「大丈夫!あれだけ頑張ったんだから、優勝間違いなし!」
「なんだか君たちが優勝するような予感がするんだよね」
「オジサンの予感はよ〜く中るんだぜぇ」、とは言ったものの、
モニターの中では、
他のグループが次々と高い得点を獲得していく。
次第に不安が募る・・・。
あのままでは、
「Nさんが髭剃ったから優勝できなかった」
「Nさんが散髪したから優勝できなかった」、と非難が集中しそうであった。
最後のエントリーが我々のグループであったが、
結果、その差わずか一点という僅差で我々の優勝が決まる。
いろいろな意味で、「よかった、よかった」、なのであった・・・。
今日は朝から三宮に出かけていた。
いつものカフェで寛ぎながら、子どもとの「約束」についていろいろと考える。