■ めだまやきくん

aquio2007-09-05

独り住まいを始めてから三年が過ぎようとしている。
単身赴任は気楽でいいのだが、
鍋釜をはじめ、
生活するための雑器がいろいろと要る。
岡山と神戸、所帯が二つあるということは、
何かと不経済なことではある・・・。
午後二時、東急ハンズでMさんと待ち合わせる。
約束の時間まで小一時間ある。
それまで調理器具の売り場を見て回ることにした。
調理器具の売り場を見て回るのはとても楽しい。
売り場の片隅に、
「めだまやきくん」という名の商品が置かれていた。
説明書を読んでみると、
窪んだところに卵を入れ、電子レンジで一分ほど過熱すると、
簡単に「目玉焼き」が出来る・・・、と書かれていた。
油は不要、とも書かれている。
「スグレモノではないか!」、と思わず衝動買いをしてしまった。
アパートに帰り、「めだまやきくん」のテストを行う。
窪んだところに卵を入れ、爪楊枝で黄身に小さな穴を開ける。
穴を開けておかなければ、黄身が破裂するらしい。
「油は不要」と書かれていたが、バターを一欠片加えてみた。
塩と胡椒をふりかけ、電子レンジでチンする。
過熱時間は約一分。
恐る恐る蓋を開けてみると、立派な目玉焼きが出来上がっていた。
皿に盛り付け、一つはそのまま、もう一つには醤油をかけて食べてみる。
フライパンでじっくりと焼いた目玉焼きの方がはるかに美味い。
目玉焼きというより、茹で卵に近い食感があるな。
黄身が固すぎる。
過熱しすぎたのかもしれない。
説明書を読み返してみると、
「お好みに応じて過熱時間を調整してください」、と書かれていた。
次回は四十秒にタイマーをセットしてみよう。
「目玉焼き」といえば、
あれは「高倉健」主演の「居酒屋兆治」だったと思うが、
その映画の中に、あの「大滝秀治」が小学校の校長先生の役で出ていた。
いいねぇ、「大滝秀治」は・・・。
この校長は教え子と所帯を持っているのだが、二人は親子ほどにも歳が離れている。
校長の朝食といえば、パンと紅茶と目玉焼きが一つ。
それが日課のような朝食であったが、目玉焼きが二つ出る時がたまに、ある。
それは「今夜はお願い・・・」、という奥方からのサインなのであるが、
親子ほどにも歳が離れているため、
校長は奥方の要求になかなか応えられないでいる・・・。
ま、そんな内容のシーンがあった。
今夜は目玉焼きを二つも食べてしまった。
しかし、「今夜はお願い」、とは誰も言ってくれない。
単身赴任のオッサンの夜は粛々と更けていくのであった・・・。