■ 友あり遠方より来る
岡山からKH君がアトリエにやって来る。
昼にカレー・うどんをご馳走したら、
急ぎの仕事を手伝ってくれた。
KH君と談笑していると、
EHがフラリとアトリエに入ってきた。
「おぅ、久しぶりやなぁ・・・」
「九州から東京に帰る途中に立ち寄ったんだけどさ」
「ほんまに久しぶりやなぁ、何年になる?」
「三年ぶり、ぐらいかなぁ・・・」
EHはパッケージ・デザイナー。
「テレビ・チャンピオン」という番組の中で、
EHは初代ペーパー・クラフトのチャンピオンに選ばれたことがある。
彼との付き合いはかれこれ二十年にもなるだろうか・・・。
同い年ということもあり、
初対面の頃から親しく付き合っている。
訊けば、今夜は神戸の知人に会う約束があるとのこと。
「それじゃぁ一緒に飯でも食おう」、ということになり、
KH君を連れて三宮に出る。
焼肉を鱈腹食べた後、「グラシアス」という名のサロンに向かう。
どうやら、この店の女主人がEHの知人であるらしい。
「グラシアス」という名前の通り、店はラテン一色であった。
この店の女主人は著名なラテン音楽の歌手である、という。
珍客がやって来た、というので、
「キサス・キサス・キサス」他二曲ほど、その歌声を披露してくださったのだが、
これがまたなかなかに情感の籠もった歌声であった。
ついつい、それらが流行った頃の情景を思い出してしまう・・・。
「トリオ・ロス・パンチョス」に「ロス・インディオス・タバハラス」、
そして「ロス・トレス・ディアマンティス」・・・。
なんて懐かしいのだろうか・・・。
私は今夜中に六甲山に帰らなければならない。
KH君も今夜中に岡山まで帰らなければならない。
二人してノン・アルコールのビールを飲んでいると、
一人の酔客がフラリと店に入ってきた。
どうやら、この酔客ともEHは馴染みの間柄であるらしい。
その酔客と名刺を交換したところ、
「あんた、岡山でおもちゃ作ってるNさんやな」、と言う。
「今から二十年ほど前、あんたと名刺を交換したことがある」、と言うではないか。
驚いてしまった・・・。
「今度、私と京都の園部に行けへんか?」
「園部はええとこやねん」
「私、園部の地域興しに関わってるねん」
「ちょっと園部の地域活性化に力貸してえな」、という話になってしまった・・・。
ひょっとしたら、近園部に行くことになるかもしれない。
これだから人と人との繋がりは面白い。
明日は名古屋の大学で講義を持つというEHと別れて帰路につく。