■ ボンカレー
今日は忙しい一日だった・・・。
午後十一時ごろ、
ヘトヘトに疲れてアパートに帰り着く。
風呂の湯を沸かしていて、
まだ晩を食べていなかったことに気付く。
冷蔵庫の中を探る。
食材は、ま、いろいろとあったが、
これから何かを作る、という元気がない。
冷蔵庫の扉の内側に、
一箱の「ボンカレー」が立てかけてあった。
Eちゃんからもらった「ボンカレー」。
冷凍してあったご飯を解凍し、
「ボンカレー」の封を切って湯煎する。
血糖値が下がっているのだろう、身体が少し震えだす。
「ボンカレー」が温まるまで、
オレンジ・ジュースを飲み、クッキーを食べて、身体を誤魔化す。
「ボンカレー」を食べるのは何年ぶりになるのだろうか・・・。
まだ、私が入社したてのサラリーマンであった頃、
その頃、私は会社の独身寮で寝起きしていた。
この日記を書きながら、
寮のオバチャンが作ってくれた料理のことを思い出す。
彼女の料理のレパートリーは数種類しかなかった。
カレーライス、炒飯、親子丼、ラーメン、豚カツ、天ぷら、カレーライス、炒飯・・・。
常に同じメニューの繰り返しであったことを懐かしく思い出す。
味付けもめちゃくちゃであったな。
あの頃ではなかっただろうか、
この「ボンカレー」を初めて食べた、というのは・・・。
寮の仲間たちと作って食べた、という記憶がある。
解凍したご飯を温めなおし、
「ボンカレー」をかけて皿の上でグチャグチャと混ぜ合わす。
盛り上がったてっぺんの辺りをスプーンで凹ませ、
凹んだところに生卵を割って置く。
大阪千日前「自由軒」風カレーライスの出来上がり。
「自由軒」といえば、「自由軒」にも長らく行っていないなぁ・・・。
あの「織田作之助」がカレーライスを食べながら「夫婦善哉」の構想を練った、という店。
私が「自由軒」に足繁く通ったのは、今から四十三年ほど前のこと。
まだ、私が天王寺の美術館で絵の勉強をしている頃だった・・・。