■ 正月呆け
午後一時半、K芸工大に向けて出発する。
後期の講義も残すところあと四コマほどだが、
都合で休んだ日もあるから、
補習の講義も四コマほどこなさなければならない。
教務室に顔を出すと、
係の女性から、
「今年のレジュメを提出して欲しい」、と告げられる。
さて、どうしたものか・・・!?
学生たちと製作の時間を共有するのは楽しいのだが、
今年の私にその時間があるとは到底思えない。
週に一度、たった三時間の講義とはいえ、
準備のための作業時間を含めると、
講義のために拘束される時間は優に一日と半を越す。
さてさて、どうしたものか・・・!?
どちらにしても、早く結論を出さなければならない。
作業室に入ると、
M君が黙々と一人でからくり人形を作っていた。
「おめでとう」
「あっ、おめでとうございます」
「皆はもう集まってる?」
「えっ?」
「えって、俺の講義は今日からやろ?」
「先生、大学は十一日からですよ」
「えっ?」
「えって、先生、そんなに僕らに勉強させたいん?」
「そやけど、君はまたなんでここで作業してるんや?」
「正月明けまでに作っとけって、先生が出した宿題やんか!」
「おぉ、そうやったな・・・」、
というワケで、すごすごとK芸工大を後にする。
いやはや、大失敗であったな。
今日は午後からこのことだけのために時間を割いていた。
職場に帰っても、何もすることがない。
だからといって、別のことに取り組むつもりもない。
仕方がないから、喫茶店でコーヒーを飲んで帰る。
昨日は独りで正月を迎えたばかり。
正月呆けか・・・?