■ 工夫

aquio2008-01-26

誰もいない岡山の作業場で、独り黙々と木工の作業に勤しむ。
木に触れるのは久しぶり・・・。
ナイフで木を削っていると、本当に心が安らぐ。
昼ご飯を食べ終えた後、
作業場の二階を少しだけ整理することにした。
取っ手を握って回転させると鳴り出すガラガラ。
ゼンマイを巻くとゆっくりと動き出す鴨のおもちゃ。
ゼンマイを巻くとノロノロと動き出すデンデン虫のおもちゃ。
細いロープを渡っていく綱渡り人形。
作品にはならなかったからくり人形の習作。
商品にはならなかった動くおもちゃの試作品・・・。
積み上げた段ボール箱の中から、
昔に作った試作品や習作がゴロゴロと出てきた。
いや、実に懐かしい・・・。
夫々には、「23 Aug. 1988 prototype 1/2」とか、
「02 Jan. 1991 prototype 1/1」とか、書いてある。
布で汚れと埃を落とし、机の上に並べてみる。
木工のいろはを知らなかった時代のものであるから、
それらには様々な工夫の跡が見てとれる。
今ならほんの数時間ほどで作れてしまう作業であっても、
当時は何日もの試行錯誤を繰り返したものだった。
湿気を吸ってボロボロになった段ボール箱の中からは、
人形の形をしたオルゴールが出てきた。
オルゴールの櫛歯やゼンマイは錆びきっていて、使い物にならない。
しかし、赤と緑に塗り分けられた胴体は、昔のままの光沢と艶を保っていた。
しかし、どのようにして赤と緑の塗料を塗り分けたのか・・・?
マスキング・テープを使い、塗料がはみ出るのを防いでいることは分かるのだが、
湾曲した人形の胴体に、どのようにしてマスキング・テープを正確に圧着させたのか、
その方法を完全に忘れてしまっている・・・。
何度も何度も試行錯誤を繰り返した、という記憶はあるのだが、
さてさて、いったいどのような方法でマスキング・テープを貼ったのやら・・・。
自分が工夫して開発した技術や方法であっても、
現場から遠ざかる時間が長くなればなるほど、
いつの間にか記憶の中から消滅してしまっている。
木を削っているうちに一日が暮れる・・・。
そんな日はいつかまたやって来るのだろうか。