■ 講義・十二日目
今日はK芸工大における講義最終日。
学生たちにはこれまでに五つの課題を課してしたのだが、
五つの課題をなんとかこなした学生は少なかった。
こなした、と言っても、
最終課題はまだ中途半端な仕上がりのままであった。
大作に取り組んでいる学生もいれば、
込み入った仕掛けのからくりに取り組んでいる学生もいる。
しかし、仕上がっていない作品に点をやるワケにはいかない。
これでは単位をやるワケにはいかない。
また、十九日には大学に彼らの成績を提出しなければならない。
五つの課題の内、三つしか提出しなかった学生が一人。
四つしか提出しなかった学生が一人。
一人の学生に「なぜ提出しなかったのか?」、と訊くと、
「先生(私のこと)の講義が面白くないから」、と言う。
「おいおい、何で講師の俺が学生の君を楽しませなあかんねん?」
「俺は吉本興業の芸人とちゃうで!」
「笑わせてくれるなぁ!」
「君の考える『面白い講義』っていうのはどんな講義やねん?」
「君が興味を持ってる講義はあるんか?」、と訊くと、
「どの講義を受けても面白くない」、と言う・・・。
大学受験で燃え尽きてしまったのだろうか、
何事に対しても興味が持てないでいる。
興味が持てないのは自分のせいであり、
そのことは十分に理解しているのだが、
他人のせいにしておけば、自分はその悩みから逃れられる・・・。
ま、そんなところなんだろうな。
まだまだ「お子ちゃま」なのであるね。
で、全員に二週間の執行猶予期間をやることにした。
「刑の執行まで二週間の猶予をやる」
「二週間後には必ず完成品を提出すること」
「提出しない学生に単位はやらん」、とそう宣言する。
ま、二週間もあれば何とかなるだろうし、何とかするだろう。
工房の外に出て煙草を吸っていたら、数名の学生たちが集まってきた。
からくりの制作に興味を持っている一年生たちだった。
「何か話をしてくれ」、と言うので、
来期のカリキュラムについて話す。
興味を持ってくれたようであった。