■ Kneipp/クナイプ

aquio2008-02-19

ニュールンベルクのスーパーマーケットで買った
「Kneip/クナイプ」の入浴剤を入れた風呂に入る。
蓮と牛乳の香りがする入浴剤。
とてもいい匂いがする。
蓮の花の香りなど嗅いだこともないが、
これが蓮の花の香りだとすれば、
死後、天国で暮らすのもそうは悪くはないな、
とそう思わせるほど、いい香りがする。
ま、天国に入れれば、の話ではあるがね・・・。
昔、昭和二十年代から三十年代にかけて、
私が住んでいた町内では、
内風呂を設けた家庭などほとんどなかったように記憶している。
夕食を終えた後の時間帯など、
風呂屋は子どもたちの社交場と化していた。
風呂屋は子どもたちの情報交換の場所であり、
文字通り、裸の付き合いの場所でった。
友達と背中を流しあったり、湯を掛け合ったりしたものだった。
大人の入浴料が十五円ほどであった時代のこと。
洗濯機もほとんど普及していなかった時代のことであるから、
人々は洗濯石鹸に毛のはえたような石鹸で、身体と髪の毛を洗っていた。
当時、風呂屋の番台では、
小袋に入った粉状のシャンプーが一袋五円で販売されていた。
貯めた小遣いで、時々はこの一袋五円也のシャンプーを買っていたことを懐かしく思い出す。
たった五円のシャンプーで、気持ちはとても豊かになれた。
花王」とは「牡丹」の異称であることを憶えたのもこの頃であるから、
きっと、五円シャンプーは「花王」の製品であったのだろう。
天井から吊り下げられた扇風機がゆったりと回転する脱衣場で、
腰に手をあてながらコーヒー牛乳をよく飲んだ。
脱衣場の壁には、「三悪追放」と印刷されたポスターが貼られていた。
当時は、貧乏と結核ヒロポンが「三悪」とされていた。
町内に金持ちの家庭などなかったから、
貧乏がなぜ悪であるのか、その理由が分からなかった。
結核は血を吐いて死ぬ胸の病気であることは理解していたが、
さて、ヒロポンの意味が分からない・・・。
針の先から液体が滴っている注射器のイラストが描かれていたことから、
何かの薬物であることは理解していたが、
ヒロポンを注射したらどのようなことが起きるのか、
イラストには、大人に訊くことさえ憚られるような怖さがあった・・・。
漫画の「三丁目の夕陽」ではないが、
子どもたちにとって、あの頃は本当にいい時代だった。
「クナイプ」を溶かした風呂に入りながら、昔のことを懐かしむ。