■ W55TとA5528K

aquio2008-02-26

大正十四年生まれの母は、
今年の五月に八十三歳の誕生日を迎える。
まだまだ元気でいてくれてはいるが、
耳が少し遠くなってきた。
また、足腰も少し弱ってきたように感じられる。
私は留守勝ちであるし、
妻も一人で出かけなければならないことがある。
で、母のために携帯電話を購入することにした。
最寄りの「au」に出向き、簡単携帯「A5528K」を買う。
「1」のボタンを押せば妻に、
「2」のボタンを押せば私に、
「3」のボタンを押せば私の弟にかかるように設定する。
母は無類の電話魔であるから、
暇があると、ま、いつも暇を持て余しているのだが、
二人の妹たちとの長話を楽しんでいる。
携帯を手渡した時、母はニンマリと薄ら笑いを浮かべていが、
「これでどこでも妹たちとの会話が楽しめる」、とでも思ったのだろうな。
で、「この携帯電話は緊急時のために買ったものである」
「この携帯電話は一ヶ月の通話時間を六十分に設定してある」
「六十分を超えると壊れるから気をつけるように」、と伝える。
まさか壊れるなんてことはないが、
六十分を超えると、とたんに通話料金が高く跳ね上がってしまう。
そのように「au」と契約を交わしたのだった。
その「au」ショップの店内には小さな電卓も陳列されていた。
「auショップに電卓?」、と手に取ると、
それは電卓などではなく、厚さ十ミリにも満たない携帯電話であった。
ヘアーライン仕上げされたステンレスの表面が実に美しい。
傍らに置かれた価格表には「〇円」、と記載されていた。
「〇円とはどういう意味か?」、と訊くと、
同じ携帯電話を七ヶ月以上使い続けており、
機種交換を希望する顧客には〇円で販売できる、ということであった。
で、手持ちの携帯を、その「W55T」と交換していただく。
実にスリムな携帯電話。
スラックスのポケットに、スルリと納まる。