■ もやもや

aquio2008-03-23

両脚のふくらはぎの外側が痛む。
鉛を抱えているような、鈍い痛み。
ビタミン類の摂取には怠りがないから、
まさか、「脚気」であるとは考え難い。
もやもやと気色が悪いったらありゃしない。
ひょっとしたら、運動不足かもしれないな。
そろそろベッドに入ろうか、と考えている時、
携帯電話の呼び出し音が鳴る。
Sさんからの電話だった。
Sさんがマンションの廊下を歩いていたら、
非常階段の手すりを乗り越えようとしている人影があったらしい。
「自殺・・・!?」と判断したSさんは廊下を走り、
非常階段に近づいたところ、
手すりを乗り越えていたのは、一人の老翁であったらしい。
Sさんはいろいろと説得を試みたらしいが、
老人は、ただ、ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべるだけだった、という。
で、Sさんが手すりから手を伸ばし、老人の服を掴もうとしたとたん、
老人は手すりから手を離して、十一階下の地面に向かって落ちていった、という。
その一部始終を、Sさんのお嬢さんも横で見ていた・・・。
「あの老人の死相の浮かんだ顔が眼に焼きついて離れない」
「娘の身体の震えがいつまで経っても収まらない」
「今夜は二人とも眠れそうにない」、と言う。
それは、そうだろう・・・。
Sさんの心が落ち着くまで、いろいろと話し込む。
この事件がSさんのお嬢さんの心にどのような影響を及ぼすのか・・・!?
生涯にわたり、その記憶が薄れる、ということはないだろう。
それを思うと、私もなかなか寝付けなかった。
死神に取り付かれた人間の思考は、
「死ぬこと」、その一点だけに絞られているのだろうが、
人知れずサッサと自殺すればいいものを、
うら若い女性の心を道連れにするとは何事か、と思わずにはいられない。
しかし、事情はどうあれ、
生きていてもそう長くは生きられない老人が、
自殺という道を選ばざるを得なかった、ということも事実として残る・・・。
そのことを思うと、遣る瀬無くなってしまう。
思いを晴らす方法がない。
思わずにいようとしても、思考はついついそこに引き戻されてしまう。
もやもやするのである・・・。