■ 整理・その22・マイクロ・メーター

aquio2008-04-16

自宅の納戸をゴソゴソと探っていたら、
古ぼけた缶の中から、
油紙に包まれたマイクロ・メーターが出てきた。
電気技師だった父が使っていたマイクロ・メーター。
私に物心がついた時、
自宅にはすでに様々な工具が転がっていた。
ニクロム線を巻き取るための巻線機なども置いてあった。
時計の針に似たゲージがついている巻線機。
上のゲージにはゼロから一千までの目盛りが刻まれていて、
下のゲージには一千から一万までの目盛りが刻まれていた。
ハンドルを回すと、
上のゲージの針がジリジリと回転していく。
針が九百九十を越える頃になると、
下のゲージの針が一千の辺りを指し示す。
その複雑な歯車の組み合わせの動きが面白く、
飽きるまでグルグルとハンドルを回して遊んでいたことを、懐かしく思い出す。
今、私はからくり人形の製作とデザインを仕事にしているが、
あの幼児期の体験がなければ、
家に巻線機などがなければ、現在の私はなかった、とそう強く思う。
マイクロ・メーターには、
「0.001mm MITUTOYO H826538」と刻印されている。
どうやら、これは精密測定機器のメーカーである「ミツトヨ」のものであるらしい。
試しに直径0.5mmのシャープ・ペンシルの芯を測ってみる。
なるほど0.5mmであるな。
いったい何年前に製造されたマイクロ・メーターなのだろうか・・・。
どちらにしても、父の遺品であることには間違いがない。
からくり人形の制作の現場において、
マイクロ・メーターなどめったに使うことはないが、
父が遺していったモノであるから、いつも工具箱に入れておくことにしよう。
それにしても、工具はどうしてこうも美しい形をしているのだろうか。
必要最小限のフォルム・・・。
余分な贅肉はどこにも付いていない。
百分の一ミリまで測定できるマイクロ・メーター。
グリップの辺りが汚れている。
父の手指の脂なんだろう。
涙が出そうになる・・・。