■ 杏

aquio2008-04-21

昨晩は気付かなかったのだが、
今朝、自宅の玄関を出てみると、
「杏」の木が見事に花を咲かせていた。
「杏」バラ科サクラ属の木であるから、
その花は櫻にとてもよく似ている。
三男のSが小学一年生になった時、
それを記念して庭の片隅に植えた「杏」
そのSも今年で二十五歳になる。
小さな苗木であったが、
今では五メートルを越す大きさになるまで育った。
「杏」は自家結実性があるから、一本でも実を結ぶのだが、
この木は未だに実を結んだことがない・・・。
関西以西では栽培が難しいと言われているから、
何かこう、気候風土のようなものが影響しているのかもしれない。
「杏」といえば、
あれは、私が十七歳の誕生日を迎えたばかりの冬、
アルバイトをして貯めたお金で金沢を旅したことがあった。
金沢にお住まいのAさんを訪ねての旅だったが、
当時、Aさんは犀川沿いの古びた公民館に寝泊りしていらっしゃった。
その公民館の扉を開けると、
そこには、あの「杏っ子」を著した「室生犀星」の碑が建っていた。
「杏よ花着け地ぞ早やに輝け」、という碑。
そして、犀川には染め上げられたばかりの加賀友禅が晒されていた。
当時、私は某大学の経済学部に進学するつもりでいたのだが、
晒されている加賀友禅の美しさを目の当たりにした時、
はっきりと自分の進む道が理解できた・・・。
受験の目標を、経済学部から美大日本画学科に変更したのだった。