■ FERDINAND THE BULL
N君は家具を作る職人。
そのN君から端材をいろいろと頂戴してくる。
椅子の腕にあたる部分の端材を角に見立て、
牛のからくり人形を作った。
顔と耳はその辺りに落ちていた板を再利用。
口の部分は建設現場に落ちていた板。
舌はポカリスエットのアルミ缶。
背板は、ホームセンターで買った集成材を加工した。
ハンドルを回すと、
牛の口は反芻するようにモグモグと動き、
ハンドルを八回ほど回すと、牛が「モー」と鳴く。
出来上がったからくりを職員たちに見せたところ、
「実に長閑ですね」とか、
「なんだか牛にからかわれているみたい」、などという反応が返ってきた。
牛が「モー」と鳴いたとたん、皆一様に「プッ」と吹きだす。
狙いどおりに出来上がったように思える。
で、からくりのタイトルを「FERDINAND THE BULL」に決める。
あれは何年前に観たアニメだったろうか、
ディズニーのアニメに、「雄牛のフェルディナンド」というのがあった。
原題は「The Story of Ferdinand the Bull」、だったと思う。
闘牛のくせに闘牛士と戦うのが大嫌い、という雄牛の物語。
闘牛場の片隅に咲く花を愛する「フェルディナンド」が、
尻を蜂に刺されて驚き、猛烈な勢いで闘牛士を倒していく、
というような物語だったと記憶している。
二年ほど前にも同じようなからくりを作ったが、
今回のからくりは、二年前に作ったモノの改訂版にあたる。
改良すべきところはすべて改良した。
六枚の歯車のあたりもずっと滑らかになった。
個展用作品の一丁出来上がり。