■ カレー・パーティ
アパートで「カレー・パーティ」を開くことになる。
まだその日程は未定だが、
職員たちに「本格的な美味いカレーをご馳走する」、
とうっかり約束してしまった・・・。
言ったとたん、「しまった!」と後悔したが、
前言を翻すのは男の沽券に関わる。
沽券というほどの品位や面目が私にあるとは思えないが、
とにかく、沽券に関わるのである。
しかし、ま、食い物の噂の広がることの早いことといったら。
「今度カレー・パーティを開くんですって!?」
「美味しい福神漬けを持っていきましょうか!?」、
などと言ってくる者が後を絶たず、
「あぁええよ、君も来たらええやんか」、
などと鷹揚に構えているうち、参加者はとうとう十人を超えてしまった。
えらいことになってしもうた・・・。
自宅から寸胴鍋でも持って来なければ対処できなくなってきたぞ。
今日、馴染みのカレー屋の亭主にそのことを話したところ、
二十人分のコリアンダーの粉をくれる。
香りを嗅いでみると、かすかに生姜の匂いもする。
どうやら、いろいろなスパイスが混ぜ込んであるみたい。
亭主の話によると、カレーには「太田胃散」を混ぜ込むのがいいらしい。
「太田胃散」には、丁子やウイキョウ、陳皮といった生薬が使われている。
カレーを一煮立ちさせた後、
「太田胃散」をサッとふりかけ、もう一度一煮立ちさせると、
スパイスの香り漂う、素晴らしい味のカレーが出来上がる、という。
「ほんまかいな?」、なのであるが、胃に優しいカレーは出来そうであるな。
実は今朝から胃が重たくて仕方がない。
「コリアンダー」には消化を助ける作用があるはず。
茶さじ一杯の「コリアンダー」を湯で溶き、茶さじ二杯の蜂蜜を混ぜて飲んでみた。
なかなかに美味かった。