■ 整理・その32・横山さんのこと

aquio2008-05-23

現在、この日記を借りて、
様々なコレクションの整理を進めているのだが、
処理できずに保管しておいた手紙類も、
相当の数に増えてしまった。
とりあえず、アパートの書類棚の中から整理を始めたのだが、
その棚の中から、
白馬村に住んでいらっしゃった横山さんからの手紙が出てくる。
以前、横山さんは長野県の白馬村において、
「ARICOTBERT / アリコベール」という名の
ペンションを経営していらっしゃった。
あの「non-no」や「an an」で、
「アリコベール」の紹介が載らない号はないほど、
一世を風靡したお洒落なペンションだった・・・。
横山さんは、また、麦藁細工の名手でもあり、
NHKの「おしゃれ工房」にも何度か出演されたことがある。
画像は、麦藁と玉ねぎの皮で作られた蜂。
あれは何度目のことだったろうか、
横山さんの「アリコベール」を訪れた時のこと、
ダイニングの棚に、相当に古びた馬車のおもちゃが飾られていたことがあった。
お聞きすると、
敗戦後間もない頃、いわゆる「闇市」で入手されたおもちゃである、とのことだった。
日本人のほとんどが食うや食わずの生活を送っていた頃のこと。
横山さんは、何日か分の食費を切り詰めてこのおもちゃを購入し、
恋人にプレゼントした、という・・・。
「なんでそのおもちゃがここにあるんですか?」、と訊くと、
「だから、その時の恋人っていうのが、今の女房なんだよ」、という答えであった・・・。
横山さんはいかにも頑固者という風貌の爺さんではあったが、
その心の中には、いつもロマンスがあったな。
ある時、ある会合にネクタイを忘れていらっしゃる、ということがあった。
横山さんは近くの百貨店にスタスタと入って行き、
トリコロールの、いわゆる三色旗を模したリボンを買って戻られた。
で、そのリボンで蝶ネクタイを結び、
澄ました顔で会合に出席されていたことを、つい昨日のように思い出す。
その横山さんが鬼籍に入られて、今年で三年になる。
心のこもった葉書や手紙は額に入れて保管したり、飾ったりしている。
明日は画材店に額縁を買いに出かけようと思う。
横山さんには、「日々を丁寧に生きる」ということを教えてもらったような気がする。