■ すだちと草競馬

aquio2008-08-30

今日は徳島からSさんがお見えになる日。
ご注文の「草競馬」はとっくに出来上がっていたが、
昨晩、知人との長電話の後、
ふと、その作品の仕上げに手落ちのあったことに気付く。
気付いてしまったら直さずにはいられない。
今朝はいつもより少し早く出勤する。
高さ四十センチ、横幅四十センチ、
奥行き十五センチほどの作品だが、
その部品の総数は約百五十個ほどにものぼる。
気になる部分を直すためには、
駆動部分のすべてを解体しなければならない。
部品の一つ一つを点検した後、
駆動部分の解体修理にとりかかる。
動かないからくりはからくりではない・・・。
すべての部品が完璧に作動してこそからくり。
納品したからくりが動かないとなると、
私の沽券に関わるし、第一、けったくそが悪い。
午前十一時、Sさんがアトリエにいらっしゃる。
まだ修理は完了していない。
「三十分ほど待ってくださいな」、とお願いする。
Sさんとのお付き合いはかれこれ二十年ほどになるが、
私が制作に取り組んでいる姿をご覧になるのは初めてのことであるらしい。
Sさんから徳島名産の「すだち」を山ほど頂戴する。
「徳島の赤ちゃんはすくすくとよく育つんでしょうね!?」
「なんで?」
「産後のすだちがいい、って言うじゃないですか」
「あんた、そりゃぁ産後の肥立ちじゃがな」、
などと馬鹿なことを喋っているうち、作品の修理は完了。
この「草競馬」はお友達へのプレゼントにされるらしい。
とても喜んでもらえた。
作った甲斐がある、というものである。
「すだち」を頂戴したことへのお返しに、代金を少しお安くする。